普通客引きの看板娘というのはもっとこう、可愛らしいものではないのか?
ところがこの娘は顔はまぁ仕方ないとして、なんというか・・・動きが、動作が不気味な気がしてならない。
この同じ動きを延々と繰り返す仕草に違和感を覚えつつ、左右の腕の伸ばし方が必ずしも毎回一致していないところが、不気味さというかキモさを増長させている。
さてその看板娘を一通りキモイと感じた後は、再び駅まで向かって歩く。
ところで、俺は海外を旅行する度に行っている事がある。
何が言いたいのかはもう分かると思うが、海外のターミナル駅は観光名所である。
下手な博物館や教会、寺なんかよりよっぽどワクワクドキドキしてテンションがあがるのだ。
間もなく駅に辿り着き、そのテンションはどんどんピークに向かっていき、自分の中のアドレナリンが湧き上がってくるのを感じた。
乗車予定の寝台列車の発車時刻は18:10だが、17:30前に駅に到着したので早速「駅」を楽しむ事にする。
外国のターミナル駅というのは大抵がそのままホームまで入っていけるようになっている。
なので関係ない人でも写真撮り放題なわけだ。
どうよ! 素晴らしい!! 特にこの駅舎内の雰囲気!! 停車している車両に広いプラットホーム!!
駅舎を抜けても続いているホームはすごく長い。
どうせならホームの先端までと思って歩いてみたが、ゆうに5分はかかる。
あまり手入れのされていないレール、巨大ターミナル駅ならではの多数の分岐点、長大なプラットホーム、線路上に生える雑草、これでは興奮が冷める事は無い。
終始テンション上がりっぱなしで写真を撮っていると、あっという間に列車の発車時刻が迫っていた。
急いで再び数百メートル先の駅舎まで引き返し、駅中のミニショップでパンと水を購入し、自分の乗る車両を確認する。
これだこれ、間違いない。 プレートにも「BANGKOK - CHIANG MAI」と表示されている。
そしてその列車の一番後部では、またしても働く男の姿が。
これに乗って一夜かけてチェンマイまで行くんだ。
これは全て俺一人の力で成し遂げた事なんだ。
さらに期待に胸を膨らませつつ、ワクワクドキドキの外国の寝台列車へと乗り込んだ。