列車が発車する前か後かは忘れたが、女性のパーサーが挨拶にやってきた。
2泊3日の旅ともなると、列車にもパーサーが付くのか。
とても優しく愛想のいいおばさんパーサーだった。
ニューオーリンズのユニオンターミナルを出発し、しばらくは街中をゆっくりと走るSunset Limited号。
そしてすぐにコーヒーミルク色したミシシッピ川を渡った。
大きなミシシッピ川の鉄橋をゆっくりゆっくりとした速度で走る為、橋を渡るのに数分を要した。
橋を渡り切ってからさらに走ると、市街地の風景から長閑な田園風景や、延々と広がっているような湿地帯に変わった。
列車は徐々にスペードを上げ始め、流れる景色も市街地より早くなった。
そしてどこで購入したか忘れたが、記念すべきこの瞬間をビールで乾杯する事にした。
ニューオーリンズの市街地で降り出していた雨もどうやらここまで来れば止んでいるようだが、空は厚い雲に覆われていた。
相変わらず外は長閑な風景。
長閑といっても雑木林や湿地帯が続いているだけなので、特に面白くは無い。
最初は珍しがって見ていた景色も、30分もすれば飽きてきた。
ニューオーリンズを発ってから1時間ほどすると昼食の時間となった。
もちろん寝台車の客は無料。 というより、食事代も運賃に含まれているといったほうが正しいか。
飲み物もアルコール以外なら無料のようだ。
昼食のお知らせは車内放送でアナウンスしていた。
細い通路を通り抜け、自分達の部屋の3両向こう側の食堂車へとやってきた。
今は日本の長距離列車でもほとんど目にする事ができなくなった食堂車。
案内された席に着くと、自分の部屋番号と名前を記入するようにとテーブルの上に紙が置かれていた。
そしてなんと食事は何種類ものセットから選べるようになっていた。
写真を撮るのを忘れたが、俺の注文したのはサラダとスープとパンのセットで、運ばれてきた料理もレストランのようなまともな出来立ての料理で、飛行機のエコノミークラスなんかより格段に良い待遇だった。
昼食を終え部屋に戻る。
今朝飲んだパブロンはほとんど効いてないようで、体調は良くなるどころか悪化の一途を辿っている気がした。
引き続き景色の移り変わりを楽しむ。 が、相変わらずの湿地帯やら林の中を進んでいるだけ。
この変わり映えのしない風景をずっと見続けているのもかなり辛いもの。
やはり想像していた通り、アメリカは広い。
日本で時速70kmで4時間も走って湿地帯が終わらない場所なんてあるだろうか。
その後は夕方まで居眠りをしたりフリーセルをしたりして過ごした。
陽がかなり傾き始めてから、昼間とほとんど変わらない風景の中に少しずつ変化が生じてきた。
西日に照らされた田舎の家や、巨大な工場。
この工場からは専用の貨物船が引かれていて、一瞬だけどテンションが上がった。
そしてあっという間にディナータイムの到来。
昼食後から全くと言っていい程動いてないので、ほとんど腹は減っていない。
が、せっかくなのでステーキを注文した。
美味いか不味いか味は別として、焼きたてのステーキが皿に乗って運ばれてきた。
やはりできたてのものが食えるというのは嬉しい。
見た目はレストラン並で美味そうだ。
夕食を終え部屋に戻った後も、居眠りをしたり外をボーっと眺めたりしていた。
といっても、窓の外は街灯すらない漆黒なので何も見えないが。
世話係のパーサーがやってきて、座席を倒して2段ベッドにした。
そして現地時間の午後9時過ぎ、テキサス州のヒューストンへと到着した。
やっとタバコが吸える!
写真を撮影したかったので、カメラとタバコを持って表へ出た。
ここがヒューストン・・・。
ヒューストンという名前くらいはみんな聞いた事があると思う。
しかし都市の規模や場所は分からない人も多いだろう。
ヒューストンはアメリカ南部の最大の都市で、全米でも4位に入る大都市だ。 と、Wikipediaに書いてある。
一服をしつつ写真を撮る。
高層ビルの全景が肉眼で確認できるくらいの距離という事は、どうやらここヒューストンもニューオーリンズ同様、市内の中心地からは若干離れているようだ。
ここで新たな誤算が。
本来ヒューストンでは数十分停車する予定だったのだが、到着が遅れていた為に時間調整で10分程度しか停車しなくなったらしい。
悠長に写真を撮っている場合じゃない!
一応簡単なパンフレット兼時刻表は持っているが、次の停車駅まではまた何時間もかかるし、何分停車するか分からないから慌てて2本目のタバコに火をつけた。
車内に戻る列車は再び走り出した。
次の停車は午前3時にサンアントニオだ。
それまでは寝たりDSをしたりして到着するのを待つ事にした。
それにしてもパブロンが効く気配が全く無い。
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