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 11.04.28 社会主義の途上国

ハロン湾クルーズ 水上生活者

岩山の洞窟を抜けた先は袋小路の湖のようになっていた。
突然大きな飛沫の音が聞こえたので、音のした方に振り向くとアホな白人が2人、奇声を発しながら海へ飛び込んでいた。

ハロン湾クルーズ ハロン湾クルーズ

手漕ぎ舟は現地で生活している者と同じ高さの目線で、ゆっくりと水上を進んで行った。
客船のデッキからは見られなかったいくつもの光景が次々と目に飛び込んでくる。
それは感動すべき事もあれば苦言を呈するような事もあり、ここは世界遺産といえども現地の人間の生活の場でもあるんだという事を改めて感じた。

この美しい景色の裏側にはもちろんそれを保護する為に翻弄する人間もいるであろう。
ツアーできている観光客のほとんどの人間はここが世界遺産だと知っている為、最低限のマナーや礼儀を弁えていると思う。
なので恐らくはほとんどが現地生活者のものであろう。
この水面に浮かんだ多くのゴミは。
ビニール、プラスチック、発泡スチロール、ペットボトル、決して水に還る事のないゴミが至る所に漂っていて美観を損ねていたのは非常に残念だった。

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ここに暮らす多くの人達の生活の場は、それは陸地ではなく水上であろう。
家も商店も井戸端会議の場も、そして学校も。
水面に浮くアクアマリン色をした小屋、「あれは学校です。」と船頭が言った。
この時は「なるほど」くらいにしか思わなかったが、日記を書いている今改めてこの小屋を見ると、果たしてここで一体どれだけの教育が施せるのだろうと思ってくる。
ここに暮らす子供は何を学び何を感じて、そしてどんな大人になるのか。
ここの生活者の収入は、8割以上が観光収入だろう。
そして子供達は今の大人達を見ながら育っていき、その子供が大人になったらさらにその子供がそれを見て育つ。
これを好循環と思うか悪循環と思うかは人それぞれの考え方によるものだから、これ以上深く考えるのはやめる事にする。

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手漕ぎ舟での湾内クルージングは1時間弱で終了した。
その後再び客船に乗り換え、そこからまたしばらく船で走り鍾乳洞へ向かう事となった。

デッキからふと下を見ると、手漕ぎ舟を使った複数の物売りが見えた。
内部にはカラフルな色をしたフルーツがぎっしりと綺麗に積み込んでありとても美しい。
あの中のライチ1つでも食べてみたいと思ったが、俺のマイナス思考が働いて即座にその考えを払拭した。

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客船は鍾乳洞へ向かって再び走り出した。
デッキに出て改めてハロン湾を眺めて見ると、やはりそれはとてもとても美しく素晴らしい景色が広がっていた。

そういえば、俺はハロン湾に向かう船内から独り言ですら日本語を喋っていない。
そんな俺は一体何人に見えるのだろうか。
「すいません、すぐ戻るので席を見ていてもらえませんか?」 と俺に英語で話しかけてきたのは、日本人カップルの男の方だった。
「いいですよ。」 と俺も英語で返す。
俺がタイ人とばかり英語で喋っているから外人に見えたのだろうか。
それとも多分日本人だと思うが、もし違ったら嫌なので一応英語で話しかけてみるか、と思ったのか。

色んな人達がツアーに参加している。
俺が分かったのは日本人、タイ人、ロシア人、中国人、得体の知れない白人もたくさんいたが、白人は皆アメリカ人とでもしておくか。
俺は今日本当にこの気の会う4人で行動できてよかった。

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そしてこの景色。
これも一生忘れる事のない思い出になった。
今までいくつか外国に行っているが、この時点ではベスト2の景色だ。
ちなみに個人的なベスト1はコチラ

船は岩山の中を進んで行く。
近くに見えていた岩山は、少し離れるとあっという間に再び水墨画の絵に戻った。
墨の黒一色で表現しているそれは、遠いほど薄く近いほど濃く、絶妙な濃淡で遠近感を表している。

ハロン湾クルーズ ハロン湾クルーズ

天気が優れないおかげでこの水墨画の風景を堪能できたのだが、やはり晴天もほしい。
元々ハロン湾はその地理的理由から快晴の日はかなり少ないらしく、特に雨季に入った時期だと太陽が覗かない週もあるらしい。
ベトナム北部の雨季は5月~9月なので、まさに先週雨季に突入したばかりなのだ。

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それでもこの景色を堪能できたので大満足だ。
そして新しい友達もできたし。

ハロン湾のツアーはまだまだ続く。

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