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 11.04.28 社会主義の途上国

別れ、そしてまたもや大失敗

2人の宴会はまだまだ続く。
人見知りな俺だけど、アルコールと旅の開放感のおかげで話はどんどん弾んだ。
中流レストランの店の入り口は常に大きく開け放されているのがベトナム流らしく、この店も例外ではなかったので、最初の1時間ほどは汗が止まらなかった。
しかし酒が進むに連れて身体が冷えてくると、汗の量は次第に減りやがては止まったので、おかげで何度もトイレに足を運んだ。

一日で一番気温が高いであろう14時過ぎに店に入り、店員も驚くほど飲みまくる事7時間。
時刻は21:00。
20:00にシンの泊まるホテルから空港へ送ってもらう約束をしていたのに、現在は21:00。
フエからハノイに向かう飛行機の時間は22:10。

しまったあぁぁぁ!!!

楽しくて時間があっという間で、完全に我を忘れていた。
急いで会計を済ませてホテルへと急ぐ。
ちなみに7時間延々と飲み食いしたが、料金は日本円で約2200円。
ビール十数本にボトルワイン1本やウイスキーも飲み、料理もかなり注文したのにこの価格。
ぼられる事もなく、酒も飯も美味く楽しく飲めたので大満足だった。

ホテルに戻りシンと別れの挨拶と固い握手をして、フェイスブックを交換した。
現在21:15。 フライト時刻まで1時間を切っている。
とりあえず空港まで送ってくれるホテルの兄ちゃんのバイクの後ろに飛び乗って大急ぎで空港へ向かってもらった。

飛ばせ飛ばせ、どんどん飛ばしてもっともっと急いでくれ。
2人乗りのせいかスピードはあまり出ないように感じたが、それでも時速70km/h前後で走っているので、周りの車やバイクを次々と追い越していた。

俺の考えは完全に甘かった。
フエ市内はそれなりに栄えているが、バイクで5分も走ればド田舎だろうから、空港までは遠くてもバイク10分強で行けると考えていた。
ところが10分走っても15分走っても空港は見えてこない。
走っている道はそれなりの大きさの幹線道路で街灯も整備されているが、空港が存在する気配が全くしてこない。
(今日記を書きながら知ったのだが、Wikiには空港からフエ市内まで車で30~40分と書いてあった。)

運転手の兄ちゃんは言う。
「もうきっと間に合わないよ。 今日は戻ってウチに泊まりなよ。」
フライト時刻まで40分を切っているので俺もその方が賢明だと思ったが、とにかく行くだけ行ってくれ! とお願いした。

こうしてガンガン飛ばしてくれたおかげで20分強で空港へ到着した。
兄ちゃんも「よかった、まだ間に合うよ。」と言ってくれた。
が、時間は30分を切っていた。
しかしとても頑張ってくれたのでチップを渡し、「次に来た時はウチのホテルに泊まってね!」と、名刺をもらってチェックインカウンターへと走った。

カウンターにてEチケットを見せる。
もう最終搭乗手続きが終わっていてもおかしくない時間だが、ここは祈るしかない。
祈ってダメならゴネるしかない。
しかしカウンターの女から返って来た言葉は予想の斜め上をいっていた。
一体誰がこんな返事が返ってくると想像できたであろうか。

あなた・・・急いで来たみたいだけど、あなたの乗る便は5月5日よ・・・。

(現在は5月2日)

         ナ ゝ   ナ ゝ /    十_"    ー;=‐         |! |!
           cト    cト /^、_ノ  | 、.__ つ  (.__    ̄ ̄ ̄ ̄   ・ ・
ミミ:::;,!      u       `゙"~´   ヾ彡::l/VvVw、 ,yvヾNヽ  ゞヾ  ,. ,. ,. 、、ヾゝヽr=ヾ
ミ::::;/   ゙̄`ー-.、     u  ;,,;   j   ヾk'! ' l / 'レ ^ヽヘ\   ,r゙ゞ゙-"、ノ / l! !ヽ 、、 |
ミ/    J   ゙`ー、   " ;, ;;; ,;; ゙  u ヾi    ,,./ , ,、ヾヾ   | '-- 、..,,ヽ  j  ! | Nヾ|
'"       _,,.. -─ゝ.、   ;, " ;;   _,,..._ゞイ__//〃 i.! ilヾゞヽ  | 、  .r. ヾ-、;;ノ,.:-一'"i
   j    /   ,.- 、  ヾヽ、 ;; ;; _,-<  //_,,\' "' !| :l ゙i !_,,ヽ.l `ー─--  エィ' (. 7 /
       :    ' ・丿   ̄≠Ξイ´,-、 ヽ /イ´ r. `ー-'メ ,.-´、  i     u  ヾ``ー' イ
       \_    _,,......::   ´゙i、 `¨ / i ヽ.__,,... '  u ゙l´.i・j.冫,イ゙l  / ``-、..- ノ :u l
    u      ̄ ̄  彡"   、ヾ ̄``ミ::.l  u   j  i、`ー' .i / /、._    `'y   /
               u      `ヽ  ゙:l   ,.::- 、,, ,. ノ ゙ u ! /_   ̄ ー/ u /
            _,,..,,_    ,.ィ、  /   |  /__   ``- 、_    l l  ``ーt、_ /  /
   ゙   u  ,./´ "  ``- 、_J r'´  u 丿 .l,... `ー一''/   ノ  ト 、,,_____ ゙/ /
        ./__        ー7    /、 l   '゙ ヽ/  ,. '"  \`ー--- ",.::く、
        /;;;''"  ̄ ̄ ───/  ゙  ,::'  \ヾニ==='"/ `- 、   ゙ー┬ '´ / \..,,__
、      .i:⌒`─-、_,....    l   /     `ー┬一'      ヽ    :l  /  , ' `ソヽ
ヾヽ     l      `  `ヽ、 l  ./  ヽ      l         )  ,; /   ,'    '^i

ほら日付を見て・・・。

         ,. -‐'''''""¨¨¨ヽ
         (.___,,,... -ァァフ|
          |i i|    }! }} //|
         |l、{   j} /,,ィ//|
        i|:!ヾ、_ノ/ u {:}//ヘ   この件については俺が悪いのかい?
        |リ u' }  ,ノ _,!V,ハ |
       /´fト、_{ル{,ィ'eラ , タ人
     /'   ヾ|宀| {´,)⌒`/ |<ヽトiゝ         それともシンカフェのおっさん?
     ,゙  / )ヽ iLレ  u' | | ヾlトハ〉
     |/_/  ハ !ニ⊇ '/:}  V:::::ヽ
    // 二二二7'T'' /u' __ /:::::::/`ヽ               それともお前か・・・?
    /'´r -―一ァ‐゙T´ '"´ /::::/-‐  \
   / //   广¨´  /'   /:::::/´ ̄`ヽ ⌒ヽ
   ノ ' /  ノ:::::`ー-、___/::::://       ヽ  }
_/`丶 /:::::::::::::::::::::::::: ̄`ー-{:::...       イ

おそらくは俺の語学力の無さが招いた結果だろう。
ホイアンのシンカフェの店員には『5月5日に日本に帰国するから5月3日にはハノイに着きたい。』と伝えたはずだが、うまく伝わらずに『5月5日にハノイに行きたい。』と勘違いされてしまったのだろう。
今更シンカフェの店員を恨んでも仕方が無い。 彼は彼でよくやってくれたと思うし。
俺はこの最大の危機的状況を何とか打破するべく、脳みそをフル回転させてありったけの知ってる英語を並べて、[私困ってます! どうしてもこの便に乗りたいんだい!!]アピールを開始した。

熱弁を奮う事数分、アピールが通じたのか通じてないのかは分からないが、カウンターの女から、

あそこで名前を書きなさい。

と言われた。
おそらくキャンセル待ちの人間の欄なのだろう。
いくら国内線とはいえ、何と簡素でアナログなんだ・・・。

しかしこんな紙切れに名前を書くだけで飛行機に乗れるのだろうか。
もしキャンセルする人が居なかったら俺はどうなる?
間違いなく今日は飛行機には乗れないだろうが、明日なら乗れるのか?
もし乗れなかったら今夜はどうする? 街へ戻るのか? この空港は24時間か?
色々考えすぎてネガティブになってきたので、ニコチンを摂取しに一旦外に出た。

そして気を落ち着かせてもう一度カウンターの女に話しかける。

俺は・・・どうなる?

あと1分待って。

・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

長い。 1分ってこんなにも長いのか。

ほら、搭乗券を発行したから荷物をよこしなさい。
あなたは向こうから入場して。

なんと・・・なんと乗れる事になった!
今夜この便に乗れる事になった!!!!

簡単な手荷物検査を済ませて最終ゲートを進むと、それなりの人数が階段のところにひしめき合っていた。
中には数人の日本人の老人グループもいた。
案内に従ってタラップから飛行機に乗り込み、自分の座席に座る事ができた時は、安堵と満足で不気味な笑みを浮かべていた。

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