今頃はきっとニャチャンからホイアンへ向かっているバスの中のはずだったのだが・・・。
シンカフェを出てこれからどうするかを考え始めた。
改めてシンカフェの看板を見てみると、「The Shin Tourist Office in Mui Ne」とでかでかと書いてあった・・・。
いくらホテルが満室とはいえ、どこか1件くらいなら空いているかもしれない。
しかしここはリゾート地なので、ホテルの値段も都市部の安宿と比べたら段違いに高いだろうし、そもそもこの街に安宿が存在するのかが怪しい。
そう考えながら、少ない望みを抱いてすっかり暗くなった街を歩き始めた。
5分・・・10分・・・しばらく歩いてみたがこの街には安宿などなさそうだ。
そもそもここは海沿いにメインストリートが1本あり、その道の両側にホテルや商店が立ち並んでいるだけなので、商店やホテルの数も少ない。
1件だけゲストハウスがあったが、どうせ満室だろうと思い訪ねもしなかった。
結局はまたシンカフェの前にもどってきてしまた。
その横からまたビーチに向かう。 夜の海は真っ黒だ。
浜辺へ降りる階段の一番上に腰をかける。
階段の色の変化の具合や苔の付き具合を見てみると、満潮時には階段の3段目くらいまで水に浸かるようだ。
まぁ一番上ならば大丈夫だろう。
荷物を置いてバッグを枕にして横になり、この階段の一番上を今夜の寝床に決めた。
少し離れた道路の方からは、人々の喧騒や車やバイクの走る音が波の音に混じって聞こえてくる。
夜空を見上げると、見た事も無い星座の星々が輝いている。
そういえば俺に星座の知識なんてなかった。
近くでどっかの外人がバカ騒ぎをしている。
が、やがてはそれも聞こえなくなった。
潮がだんだん満ちてきたようだ。
満潮時の7割も満ちれば、この砂浜は完全に水没するだろう。
闇夜のビーチを歩くカップルもちらほらいる。
奴らは俺に気付いているだろうか。 俺は気付いている。 メラゾーマ!
何時間経っただろう。
時計を全く見てないので時刻は分からないが、既に街の喧騒も消え失せて、聞こえるのは波の音だけになった。
満天の星空の下立ちションをしたりタバコを吸ったり、気温も下がって海風が心地よい。
これはとても貴重な体験だ。
海外で野宿なんてバックパッカーでも滅多にやらないだろうから、この体験はプラスとして捕らえるべきだろうか。
それとも惨めな体験としてマイナスとして捕らえるべきだろうか。
満ちてきた波音を聞きながら目を閉じ、そんな事を考えていた。 |