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 11.04.28 社会主義の途上国

バスが来ない・・・

日記を書きながらも汗は止まる事なくどんどん流れ出てくる。
そう、ここのレストランは室内ではなく、お洒落チックにオープンになっているせいで暑さを凌ぐ事ができない。
身体の水分は全て汗で出ていくので、どれだけビールを飲んでもトイレに行く事はほとんどない。
やばい。 このままでは脱水症状だ。

飯も食い終え酒も飲み終え日記も書き終え、やれる事は全てやり尽くしたが、それでもまだ次のバスが来るまで5時間近くある。
このまま店に居続けるのも何となく気が引けてきたので、シンカフェの隣のベンチに移動した。
ここのベンチは木の真下だったので少しは居心地がよかった。

ベンチに横になって昼寝を開始。
しばらく眠った後時間を確認するがまだ16時。 バスが来るまではあと3時間もある。
少し夕方になってきたので再びビーチに出てみる事にした。

ムイネの海 ムイネの海

昼に見に来た時よりも多くの人が居たが、それをただボーっと眺めているだけのこの虚無感たっぷりの時間は本当につまらん。
水着持ってくればよかった・・・。
水遊びをする事もなくフラフラとビーチを歩いてみたが、それもまたすぐに飽きた。
今日のこの時間、本当に無意味だ。

再びシンカフェの横のベンチに戻ってきて30分くらいボーっとする。
今日だけで1年分くらいボーっとしてる気がする。
しかしいくら日影とはいえ気温まで遮る事はできないので暑すぎる。
そしてまたビールを求めてトボトボと小さな街を彷徨い始めた。

ここら辺の店はクーラーの効いた室内店舗は無いのか・・・。
ほとんどの店が道路やビーチに面していてオープンになっている店ばかりだ。
たまに室内店舗があっても、それは高そうなホテル併設の店だったりして、なんとなく入る気にはなれない。
ニャチャンにこんなに長く足止めされる事が分かっていたのなら、美味しいシーフードの店でも調べとくんだった。
たまにメニューを店の入り口に張り出してあるのでシーフードの価格を見てみると・・・日本のレッドロブスター並み。
この国の物価で日本並みの料金を支払う事以外バカらしい事はない。
それはもう昨日のおっぱぶで懲りた。

もうビールが飲めればなんでもいいや。 という気持ちでさっきとは別の店に入る。
もちろんこの店も道路に面してオープンになっている。
奥のほうのテーブルでは、店の家族らしき数人が鍋を囲んで夕食をとり始めていた。
明らかに客ではなく、この店を営んでいる家族だ。
それにしても、このクソ暑いのに鍋とは・・・。

店でトイレを借りた。
ベトナムは、基本的には一般家庭に浴槽は無いと思われる。
昨日までのホテルのように、1畳くらいのスペースに便座とシャワーが同じ場所にあるのが一般的のようだ。
この店も同じで、外見はリゾート地のレストランなのにトイレは上記の要領になっている。
しかも誰かがシャワーを浴びた直後らしく床は濡れていて、洗面台には歯ブラシやシャンプーが置かれていた。

18時過ぎ、シンカフェのベンチへと戻る。
19時出発のバスだからか、シンカフェ前にはバス待ちの客はまだ居なかった。
そして18時半。 集合は発車の30分前になっているのにまだ1人も他の客が来ない。
おかしいな・・・ひょっとして今夜ニャチャンから乗るのは俺だけか!?

ムイネのシンカフェとレストラン ムイネのシンカフェとレストラン

そうだ、今のうちにフエからハノイまでのチケットを取っておこう!
そう思ってシンカフェの中へ入り、フエからハノイまでのバスチケットが欲しい事を従業員に伝えた。
しかし返って来た言葉は・・・明日も明後日も満席だという。
これはまずい。 大幅に予定が狂ってしまう・・・。
こうなると、今夜ニャチャンを経ち明日フエへ着いたら、シンカフェ以外の旅行会社をあたるか電車か飛行機で移動するしかないが、ホーチミンで電車は満席と既に言われているので、あとは飛行機しかない。
飛行機なんて、いくら国内移動とはいえ前日にチケットを取るのは無理すぎるだろう・・・。
あとは他の旅行会社のバスでの移動だが、フエにシンカフェ以外に信用できる旅行会社がどれだけあるのだろう・・・。

最悪の場合、ハロン湾のクルーズに行けないかも知れない・・・というか、行けない可能性が大きくなってきた。
ハノイに6日に着くのでは遅い。
できれば3日にはハノイに到着したかったが、もう100%無理になってしまった。
だって3日にやっとフエへ到着するのだから。
もうこの際多少割高になってもいいから、早くハノイへ到着したい。
もうフエでの1泊は完全に諦めた。

そして、ふと時計を見た。 時刻は18時50分。
今夜のバスに乗る他の客の姿が1人も見当たらない。
それどころかバスが来る気配が無い。 おかしい。
・・・おかし過ぎる。
しかしちょうど目の前に大きなバスが停まったので、これが今夜19時にホイアンへ向かうバスなのか聞いてみた。
※ここからはネイティブな英語での会話です。

そこに停まってるバスは19時に出発してホイアンへ行くバスか?

すると信じられない答えが返って来た・・・。

あなた何言ってるの? 今日はホイアンへ行くバスは無いわよ。

何だって!? 俺はバスのチケットを持っているぞ! ほら!! ちゃんと19時にニャチャン発ホイアン行きとチケットにかいてあるだろう!!

バカね。 そもそもあなたの認識が間違っているわ。 ここはニャチャンじゃなくてムイネよ。

         ナ ゝ   ナ ゝ /    十_"    ー;=‐         |! |!
           cト    cト /^、_ノ  | 、.__ つ  (.__    ̄ ̄ ̄ ̄   ・ ・
ミミ:::;,!      u       `゙"~´   ヾ彡::l/VvVw、 ,yvヾNヽ  ゞヾ  ,. ,. ,. 、、ヾゝヽr
ミ::::;/   ゙̄`ー-.、     u  ;,,;   j   ヾk'! ' l / 'レ ^ヽヘ\   ,r゙ゞ゙-"、ノ / l! !ヽ 、、 |
ミ/    J   ゙`ー、   " ;, ;;; ,;; ゙  u ヾi    ,,./ , ,、ヾヾ   | '-- 、..,,ヽ  j  ! | Nヾ|
'"       _,,.. -─ゝ.、   ;, " ;;   _,,..._ゞイ__//〃 i.! ilヾゞヽ  | 、  .r. ヾ-、;;ノ,.:-一'"i
   j    /   ,.- 、  ヾヽ、 ;; ;; _,-<  //_,,\' "' !| :l ゙i !_,,ヽ.l `ー─--  エィ' (. 7 /
       :    ' ・丿   ̄≠Ξイ´,-、 ヽ /イ´ r. `ー-'メ ,.-´、  i     u  ヾ``ー' イ
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    u      ̄ ̄  彡 "   、ヾ ̄``ミ::.l  u   j  i、`ー' .i / /、._    `'y   /
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        /;;;'' "  ̄ ̄ ───/  ゙  ,::'  \ヾニ==='"/ `- 、   ゙ー┬ '´ / \..,,__
、      .i:⌒`─-、_,....    l   /     `ー┬一'      ヽ    :l  /  , ' `ソヽ
ヾヽ     l      `  `ヽ、 l  ./  ヽ      l         )  ,; /   ,'    '^i

今頃気付いたの? おバカさんね。 これから一体どうするつもりなのよ。

         ,. -‐'''''""¨¨¨ヽ
         (.___,,,... -ァァフ|
          |i i|    }! }} //|
         |l、{   j} /,,ィ//|
        i|:!ヾ、_ノ/ u {:}//ヘ
        |リ u' }  ,ノ _,!V,ハ |
       /´fト、_{ル{,ィ'eラ , タ人        どうすればいいのか・・・
     /'   ヾ|宀| {´,)⌒`/ |<ヽトiゝ
     ,゙  / )ヽ iLレ  u' | | ヾlトハ〉
     |/_/  ハ !ニ⊇ '/:}  V:::::ヽ        こっちが聞きたいぜ・・・。
    // 二二二7'T'' /u' __ /:::::::/`ヽ
    /'´r -―一ァ‐゙T´ '"´ /::::/-‐  \
   / //   广¨´  /'   /:::::/´ ̄`ヽ ⌒ヽ
   ノ ' /  ノ:::::`ー-、___/::::://       ヽ  }
_/`丶 /:::::::::::::::::::::::::: ̄`ー-{:::...       イ

そう言って半べそで失禁寸前の俺は、このシンカフェ・ムイネ支店の女性従業員に泣きついた。
すると彼女はパソコンをカタカタ叩きながらどこかへ電話を掛け始めた。
数分して電話を終えた彼女は話し始めた。

まず、ここはムイネでニャチャンへはバスでまだ5時間もかかるのよ。
今日はもう走るバスは無いから明日の13時にまたここに来なさい。
ムイネからニャチャンへのバスを確保しといたから。
ついでにニャチャンからホイアン、ホイアンからフエまでのバスも変更しといたわ。
よかったわね、空席があって。

おぉ・・・ほとんど何も言ってないのになんという気遣いだ・・・。

あなた本当に分かってるの? 感謝しなさいよ。
明日の13時にここに来てニャチャン行きのバスに乗るのよ。
手数料なんていらないけど、ムイネからニャチャンまでの座席は新規の確保だから20万ドン払いなさい。

払いますとも!!

バカね! 200万ドンじゃないわよ、20万ドンよ!! 早くしまいなさい!!

他の従業員もみんな笑っている。
きっとこう思っているに違いない。
『何でこいつは英語もろくにできないのに異国の地を一人で旅しているんだろう笑い』 と。
そして別の従業員が話しかけてきた。

今夜はどこのホテルも満室だぞ。 どうするんだ?

ビーチにでも寝るよ・・・。

・・・そうか。

俺がバカだったよ。 どうもありがとう! すごく感謝してるよ!!
それじゃぁまた明日(^_')/

間違いなく明日の午後1時に来なさいよ!!
もう次は無いわよ!!!

OK,Honey! See you tomorrow!!
Good luck me!!

(ったく・・・バカなんだからアイツったら・・・。 でもあんな純粋なバカがいるとこっちもやる気が出てくるわ。 そしてその後の達成感というか・・・とても充実した気持ちになるわ。
でも全員があんな客だとこっちの身が持たないけどネ。 また明日ね・・・おバカさんミ★)

ムイネの夜の街並み ムイネの夜の街並み

こうして自分の間違いにやっと気付いた俺は、無駄な一日を過ごした軽い後悔の後、寝床はどうするかを悩み始めた。

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