宿に帰ってくると、宿の若奥さんは「明日は何時に起きるの?」と訪ねてきた。
シンカフェのツアーがとれなかったので予定など全く無く、起きる時間など本当は何時でもよかったのだが、つい咄嗟に「8時に起きて市内観光に行くよ」と答えてしまった。
すると「7時半に起こすわね。朝食を用意するわ。」と言ってきた。
胡散臭い話だ・・・思わず躊躇した。
そしてついつい「いくら?」と聞いてしまった。
すると「お金なんかいらないわよ。」と返ってきた。
飯を出して法外な料金を請求するんじゃいかと一瞬でも疑ってしまった自分が情けない。
と思ったが、用心するのにこした事はないと言い聞かせた。
そして翌朝、8時にモーニングコールが鳴る。
しかし昨夜のクルーズ疲れが取れない。 眠たい・・・。
しばらくするとまたモーニングコールが鳴る。
あぁ・・・無視してゴメン・・・でもうるさいよぉ・・・。
何回かに分けてけっこうしつこく鳴らしてくれたが、やがては諦めたようだ。
飯作ってたかもしれないのに申し訳ない・・・。
しばらくして起きてシャワーを浴び、出掛ける仕度をしてロビーに下りたのが9時過ぎ。
若奥さんは見当たらなかったが旦那さんがいたので挨拶をして出掛けようとすると、飯を出すからそこで待ってなさいとの事。
うおーーすまない・・・。
まぁチキンラーメンみたいなのが出てきたが、これはこれでピリ辛でかなり美味しかった。
そしてこのコーヒーの美味さ。
このクソ暑いのにホットコーヒーは如何なものか・・・と思ったが、さすが世界第2位のコーヒーの生産高を誇る国。
生産高だけでなく、実際にその味もとても素晴らしい!
あとついでにバナナも1本いただいた。
飯を食い終わっていよいよ出発。
常に地図を片手に歩いてたら詐欺師の絶好のカモなので、見た目は手ぶらを装った。
まずは絶対に言ってみたいホーチミン像に向かってみる。
印刷してきたGooglemapでは、普通に歩けば15分ほどで着くだろう。 迷わなければ。
宿を出て2回曲がってシンカフェの前を通り過ぎ、さらに直進すると大きいT字路に出た。
ここまでの道程は知っている。
このT字路を左に曲がれば、昨日の間違え両替商の店に着く。
右に曲がるとどこに到着するのか分からない。
T字路の正面は大きな公園になっている。
地図ではこの公園を突っ切って右にひたすら進むとホーチミン像に到着するっぽい。
しかし早速暑さに負けた。
5分くらいしか歩いてないが、ベトナムの日差しは容赦なく身体を焼いてくる。
まだ4月末だというのに、この国ではこれがデフォなのか・・・。
水を飲みながら木陰で一休み。
そして一服しながら地図を確認する。
そしてしばらくして再度歩き出すが、今度は1分も経たずに限界に達した。
いったいいつになったらこの公園から出られるのだろうか。
そして今度こそ気合を入れて歩く事に決めた。
とりあえず目標はこの公園を出る事だが、気温は35度以上ある。
しかし日本に比べ湿度が低いので、日陰ならば死ぬほどではない。
そしてまた歩き出す・・・。
1分・・・2分・・・3分・・・よし、公園脱出!!
しかしまたしても限界。
そして脱出したと思った公園は、実はまだかなり先まで続いていた。 なんてこった。
とりあえず交差点を渡り、さらに続いてる公園の入り口のベンチでまたまた休む。
しかしここで休んでいたのが運の尽きだった。
5分ほど休んでいると、わざわざカブから降りて俺の方に近づいてくる人物が。
名前はチュー。 片言の日本語で親しげに話しかけてきた。
ガン無視を決めてればいいものの、気付いたらなぜか雑談していた。
おそらく日本語を話せたからであろう・・・。
しばらく話していると、カブから数冊の手帳を取り出して俺に見せてきた。
全ての手帳には日本語がびっしりと書かれている。
老若男女を問わず、チューに対する感謝の言葉やお礼のメッセージで埋め尽くされていた。
その中には自分の携帯番号や本名、顔写真までも載せている奴もいた。
こいつはどうやら俺のガイドになりたいらしい。
しかしさすがに丁重にお断り。 お前のような得体の知れないベトナム人と行動するつもりはない。
しかしさらに雑談は続き、過去にチューが日本のスカパーに出た時の話が始まった。
そしてTVのキャプチャも見せてきた。
スカパーは見た事無いが、スカパー自体に少し思い出があったので、またしても話を聞いてしまった。
この炎天下の中徒歩だけで市内を巡るのはあまりにも過酷だし、Googlemapを印刷してきたといっても詳細な地理は分からない。
日本のように環状線や地下鉄なんか整備されているわけがないし、移動手段はバスやタクシーやバイクタクシーに限られる。
公共のバスは利用の仕方も、どこへ行くのかも分からないし、タクシーなんて全員がぼったくってくるだろうから、利用する気など全く無い。
そしてチューは「ガイド料はあなたの気持ちでよい」と言っている。
そしてついに・・・気付いたらカブの後ろに乗っていた。 |