ホーチミン市内に到着し、長かったような短かったような、とても濃厚なメコンクルーズの1日ツアーは幕を閉じた。
しかし解散場所がシンカフェの前ではなかったので、自分が今どこにいるのかさっぱり分からなかった。
こんな時は仲良くなった日本人のパッカーに聞いてみよう。
そしてついでに両替所の場所も聞いてみる事にし、晩飯なども一緒に食ってもいいかな~と思っていた。
俺のほうが前の席だったので先にバスを降りて待っていた。
そして3人で並んで歩き出す。
大きな交差点に来ると、上床さん似の人が「お疲れ様でした、残りの旅を楽しんで下さい!」と言って人ごみの中へ消えていった。
あれ、あれ、飯は?
その後もう1人のパッカーと少し歩いていたが、1分ほどで「バスのチケットを買いに行きます、元気で!」と言って店へと消えていった。
あ、あれ・・・?
しょうがないので両替所までトボトボと1人で歩く。
両替所と言っても、雑貨店が両替を兼ねているような感じだった。
外の看板には日本円のレートもしっかり出ていた。
店に入って30000円を両替した。 レートは空港よりは若干いい。
無事に両替を済ませ店を出るが、現在の自分の位置が分からない。
そもそもベトナムに着いてから、まだ安宿とシンカフェの徒歩3分の道以外歩いてないから分かるわけがない。
とりあえず適当に歩いてたら偶然にもシンカフェある通りに出た。
そこから宿へは簡単。
部屋に戻り一息つく。 もう少し暗くなったら飯でも食いに出掛けるか。
・・・
なんとなく胸の辺りがモヤモヤする・・・。
何かこう・・・とてつもなく嫌な予感というか、不安というか・・・。
この拭い切れない嫌な予感はなんとなく予想がついた。
おかしい。 やっぱりおかしい!!
財布を出してさっき両替してもらった額を見直してみた。
72万ドン。 確かに72万ドンある。
店員は目の前で現金を数えながら俺に配っていたし、計算を打った電卓も俺もしっかりと見ていた。
72万ドンがちゃんとこの財布にあるのは間違いない。
しかし胸の痞えは全く取れない。
それはなぜか。 その理由も大方想像できた。
空港で5000円だけ両替したときより、明らかに札の枚数が少ないから。
携帯を取り出して電卓機能で自分で計算した。
やはり・・・あのクソアマ・・・。
電卓が導き出した数字は、本来俺が受け取るべき額は720万ドン。
実際にもらった数字は72万ドン。
ちなみに、もしその店で空港で両替した同じ額の5000円を両替したとしたら、受け取るのは120万ドン。
それが今手元には72万ドン。
もう分かったと思うが、30000円ではなく3000円で計算しやがった。
これは店員の純粋な間違いか、それとも日本人と分かった後での詐欺行為か。
おそらく後者。 間違いなく後者。
詐欺は途上国の常套手段だ。 それはすでに空港からのタクシーでいきなり体験している。
それがこんな些細な罠に引っかかるとは・・・。
おそらく俺が再度店に乗り込んでも、店員はシラを切り通すだろう。
最悪な事に領収書などももらっていない。 となると、店員の言いなりだ。
奴らは何と言うだろうか。 確かに720万渡したと言うだろうか・・・それとも3000円しか受け取ってないと言うのだろうか・・・。
どちらにしても、そこで俺が怒鳴ってもこっちには何の証拠も無い。
ただやられっぱなしはやはりムカつく。
店に行っても金は9割戻って来ないだろうが、これはホントに怒りが治まらない。
ここで俺は覚悟した。 警察沙汰になってもいいから、怒鳴り込んで向こうの態度次第では大暴れしてやる。
幸いまだ両替所を出てから30分も経ってないので、店員も俺の顔くらいは覚えているだろう。
宿を出て、足早に両替所へと向かう。
怒りながらも頭は冷静でいられた。
まずは女の店員に財布から72万ドンを出してカウンターに叩きつけよう。
その次に思いつく限りの英語で怒鳴り散らす。
「3000円じゃなくて30000円だ。 72万ドンじゃなくて720万ドンだ。 これはミスか? それとも詐欺か?」
を英語で怒鳴る。 単語出てくるかな・・・。
そして顔は常に眉間に皺を寄せて。
両替所に到着すると、さっきの店員の女はカウンターの中にいた。
タイミング悪く他の客もいたが、そんな事は構ってられない。
まずはシナリオ通り財布から72万ドンを取り出して鷲掴みにし、カウンターに思いっきり叩きつけた。
そしてそこから中3レベルの英語で思いっきりまくし立てた。
女店員はポカーンとして、何でこの日本人ぶち切れてるの? という顔をしている。
俺の英語レベルが乏しいせいか、それとも女の英語力が乏しいのか、俺が言っている内容はほとんど通じてないっぽい。
なので5分以上は怒鳴り散らしていた。
女は明らかに困った顔をしている。 そしてもう1人居る男の店員も困惑している。
これは予想の斜め上、言葉通じない作戦で来たか?
だけど、俺が何に対して怒ってるのかくらいはわかるだろう。
Money exchangeとかThree thousandを連発してるのだから。
でも完全には通じてない様子。 こうなったら携帯の電卓機能で俺の言いたい事を伝えてやる!
と思って、携帯を出していじっていた時だった。
女はカウンターを出て奥へと向かおうとした。
逃がすかよ! あめーぜ!!
絶対に逃がさない。 お前が非を認めるまで何時まででもここにいてやる。
すると女は男の店員にベトナム語で何か話し、男の方が奥へと消えていった。
なんだ、仲間でも呼ぶつもりか? こうなったら本気で店のものぶち壊してやろうか! と思っていると、男はすぐに戻ってきた。
手には金庫らしきものを持っていて、それをカウンターの前で開ける。
開けると外貨紙幣が入っていて、その中にはさっきの俺の3万円もあった。
よーし、女! この諭吉を見ろ! そしてゼロの数を数えてみろ!!
いいか? one・・・ten・・・one hundred・・・one thousand・・・・・・・・・ten thousand・・・。
「ten thousand!!?」 女は驚いた様子で叫んだ。
そして俺の言いたい事がやっと全て伝わった。
そこからは女は俺に平謝りだった。
バツが悪そうな顔をしながら何度も何度も俺に謝った。
どうやら詐欺ではなく純粋に間違えただけのようだ。
もちろん720万ドンもすぐにその場で受け取れた。
男の店員もホッとした様子でみている。
自分の非を認めて何度も誤る姿を見ていると、『本当は詐欺のつもりだったけど、逃れられないから間違えた事にした。』というように演技をしている風にも到底見えなかったので、俺も笑って許した。
金もすぐに受け取れたし。
俺的にはもっとゴネてくるだろうと思っていただけに少し拍子抜けな感じがしたが、平和に終わるのが一番か。
でも今回の事件は、少なからず自分が成長できた事件だったと思う。
さて、事件も無事に解決したので、そのまま明日のクチトンネルとホーチミンの市内観光ツアーに申し込もうとシンカフェに行く事にした。
シンカフェは今日も人でいっぱい。
店内に入りパンフレットを見ていたら、昼間同じツアーだった外人旅行者が話しかけてきたのでちょこっとだけ喋った。
カウンターに行きパンフレットを見せつつ明日この1日ツアーに参加したいと言うと、受け付けてないとの答えが返ってきた。
じゃぁこの半日ツアーは? と聞いても受け付けてないという。
定員オーバーだからか、それとも明日が土曜だからか。
仕方ないので明後日出発のフエまでのバスチケットを申し込んだ。
しかしフエまではニャチャンとか3箇所くらい都市を経由しないとならないようで、タイムスケジュールを見ると丸1日かかってしまう。
まぁそれはしょうがない。
バスは寝台バスで料金は68万ドン。 約3400円。
明日は丸一日空いてしまったので、地図を片手に街をブラブラ歩いてみる事に決めた。
シンカフェを出ると既に陽は沈みきっていた。
昨日入ったシンカフェのすぐ隣のレストランに入る事にした。
店先には昨日の青年。
俺:「おい、春巻きはあるか?」
若:「もちろん!」
今日はフォー・ガー(チキンのフォー)と海老の揚げ春巻きを注文。 あともちろんビール。
2日目にしてすっかりパクチーに慣れた。
そしてこの揚げ春巻きに写っている香油は臭みがあるけどとにかく美味い。
そして酒を飲みながらダラダラと日記を書いた。
↑写真1枚目は毎晩通ったレストラン。 この表のメニューの前に毎晩青年が立って客引きをしている。 感じのいい奴。
2枚目はその隣のシンカフェ。 朝から晩まで様々な国の旅行者で溢れている。
レストランにはどのくらい居ただろうか、多分昨日も今日も2時間近くいたと思う。
外に出ると、いつの間にか道の真ん中にステージが作られていて、舞台上ではトークが開催されていた。
そしてこの通りの道路は車両は通行止めにされていて、歩行者天国になっていた。
こいつらはベトナムの芸能人なんだろうか・・・? 一応写真を撮っといた。
ステージの前には市民がいっぱい。
今日は何かのイベントか?
そういえばシンカフェで長距離バスの予約をすると、シンカフェの店員が来ているTシャツをプレゼントとパンフレットに書いてあった。
実際にバスチケットを購入すると本当にTシャツを貰えたが、この国で着る勇気は無い。
こんなの着て店員に間違えられたら面倒くさいだけだ。 帰国したら着る事にする。
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