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 11.01.22 中東の嫌われ者

ベツレヘム ヘロデ王の要塞跡

中東テロ顔のネビーーッレの待つタクシーへ戻ると、「おかえり、どうだった?」という感じで迎えてくれた。
ネビーーッレはちゃんと待っていた。(まぁ当然だが。)
そして次なる場所へ移動。

道中ネビーーッレは喋りまくりでうるさいくらいだ。
まだまだネビーーッレを完全に信用したわけじゃないので、俺の顔は時折険しくなるらしい。
そんな表情の俺を見ると、ネビーーッレはますます陽気に明るく振舞ってくる。

車は荒野を走っていく。
道はだんだんと上り坂になって行き、丘の上のヘロデ王の要塞跡へと到着した。
ちなみにネビーーッレはこの近くに住んでいるらしい。

このヘロデ王の要塞跡今回案内してもらう名所の中で、俺が一番興味ない場所だ。
遺跡だとかそういうのには全く眼中に無いので、ここは省いてくれてもよかったくらい。
しかし連れてこられてしまったものはしょうがない。 乗り気じゃないまま入って見る事にした。

ネビーーッレに教えられたとおりに、入場料を払う。
しかしこの入場料が意外に高い。 いくらか忘れたけど、ここの入場料でこんなに払うくらいなら、パレスチナ料理でも食ったほうがマシだと思ったくらい。

先に進むといきなり上り階段。
結構長い階段で、上りきるには一汗かいた。
だけど周りに遮るものが無いので、風が吹いて最高に気持ちが良い。

ヘロデ王の要塞跡 ヘロデ王の要塞跡

うーん・・・やっぱり面白くない。
ここが「ヘロデ王の要塞跡」と知ったのも帰国してからなので、この階段を上ってる最中にはここが何なのか、誰のための場所だったのかなんて知る由も無い。
そして遺跡。 歴史的価値のある場所だというのは分かるが、岩と化した遺跡には本当に興味が無い。

しかし先程も書いたように、周りに遮るものが何も無いので景色と気持ちいい風だけは最高だった。
といっても、眼下にビル郡が立ち並んでるとか、樹海や雲海を見下ろすとか、そういう感動的なものは無い。
とりあえず↓の写真を見てくれ。

ヘロデ王の要塞跡 ヘロデ王の要塞跡

荒野だ。
全く綺麗じゃない。 荒れ果てている。
ぐるっと一周360度同じ光景だ。

この丘の頂上はすり鉢状のようになっていて、その中に王様の遺跡がある。
景色はつまらないので中央に下りてみる事にした。

あぁ、上から見下ろしていたのと同じだ。
白い岩の遺跡だ。

ヘロデ王の要塞跡 ヘロデ王の要塞跡

こんなんだ。 面白みが無い。
そして遺跡の中に入ってみる。

狭い入り口から入りすぐに下り階段があり、中はひんやりとしている。
階段や通路は狭く天井も低い。 その為中腰にならなければいけない箇所が多々ある。
やはり遺跡の外より中の方が楽しい!

照明と手すりと一部の階段は人工物だが、ほとんどの階段や床、壁や天井はそのまま岩が剥き出しになっている。
この岩山を彫りぬいて作った昔の技術と労力には驚く。

ヘロデ王の要塞跡 ヘロデ王の要塞跡

上ったり下ったり、迷路のような内部を進んで行く。
特に順路は無いので好き勝手に進んでいけるのだが、5分も歩くと飽きた。
早々に切り上げてネビーーッレの元へ戻る事にした。
それでも数十分もこの遺跡に居たのか・・・。

ネビーーッレよ、お前はきっと悪人だろう。
しかし『お客を楽しませる』という商売の心意気は見事だ。
常に俺に気を使って喋りまくっている。 俺を退屈させないように、楽しんでもらえるように、そして不安を取り除こうとしているのが肌で感じる。
だからお前にはコーラを買って行ってやろう。 (俺も喉が渇いたし。)

入り口まで戻ってチケット売り場の売店にて水とコーラを購入。
物価の安いはずのパレスチナでは少々高い額だったが、それはここが観光地だからであろうか。

駐車場へ戻ると・・・ネビーーッレがいない。
車も無い。 影も形も無い。
あ、あのやろう・・・俺をだましたなーーー!!!?
ちきしょう、こんな荒野の丘の上で放り出されて俺はこれからどうする・・・?
ネビーーッレめ・・・あのやろう・・・。

この時俺は「ネビーーッレをぶっ殺してぇ!」 という思いより、「参ったわ・・・こっからどうやって帰るか・・・。」という思いの方が強かった。
とりあえずベンチに座り一服しながらミネラルヲーターを飲む。
1分・・・3分・・・5分と考え込む。
他の車に乗せてもらって街まで行くか。 それともタクシーが通るのを期待しながらトボトボ歩きながら進むか。

この状況をどのように打破するかを考えていると、1台のタクシーが来た。
ネビーーッレだった。
「いやぁ、ちょっとコーラを買いに行ってたんだよ! ごめんね!!」
なんとこのやろう・・・。
「おいネビーーッレ、コーラなら俺が買ってやったぞ。」
「いや、いいよいいよ! そんあ悪いよ! 君が飲みなよ!!」
「俺は水を買ったから、これはネビーーッレのだ。」
「本当かい? どうもありがとう!!」

そういうと、ネビーーッレは自分の持っていたコーラの缶を車の窓から勢いよくポイ捨てした。

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