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 11.01.22 中東の嫌われ者

ベツレヘム 羊飼いの野

バスを降りた瞬間、そいつらは一斉に俺のところへやってきた。
そいつらとはタクシーの客引きの事だ。
うわ~うぜ~。 俺なんてどこからどう見ても観光客だもんなあ。

最初に話しかけてきたタクシーの客引きは色黒で人相が悪く、いかにも「私は悪人です!」という面構え。
こんな奴のタクシーには絶対に乗らねぇぜ!!
1人目の客引きを断って数メートル歩くと、次の客引きが来た。
こいつも人相が悪く、そして巨漢だ。 うわー絶対に乗りたくないわ。
まぁでも教会に行くだけだからな。 さっきの客引きよりかはましか?
よし、こいつに「教会だけに行ってくれ!!」を連呼してみるか。

タクシーに乗ろうとすると、巨漢客引きのところにさっき色黒客引きがやってきて何か言っている。
色黒:「俺が最初に声かけたんだぜ~俺の客なんだぜ~」
巨漢:「でも俺のタクシーに乗ると言ってるんだぞ。」
なんかそんな感じで言い合ってる。
もういいよ、おめーらのどっちのタクシーにも乗らねえよ!! と思っていると、どういう流れで話の折り合いがついたのかは不明だが、なぜか俺は色黒客引きのタクシーに乗る事になった。

色黒は「俺のタクシーは向こうに止めてあるから着いてきて!」などと言い、歩いていく。
俺はその後ろを猜疑心たっぷりの目で見ながら仕方なく歩く。
その足取りはものすごく重い。

1分・・・2分・・・3分・・・そのタクシーとやらに辿り着かない。
これはおかしい。 こいつはタクシーなどとだましておいて、本当はどっか人気の無いところで金品を巻き上げる輩なのではないだろうか。
俺:「おい、タクシーはまだか?」
色黒:「もうすぐだよ~、ほらアレだ!」

タクシーに向かって歩いていたのはとりあえず本当だった。
しかし安心はできない。 こいつはどこからどうみても悪人なのだ。
色黒で背は俺よりも高い。 そしてなぜかこいつの顔はニヤけてるように見える。
きっと俺の事を「絶好のカモが来たぜ~」とか思ってるに違いない。

タクシーに乗り込み、「教会へ行ってくれ、いくらだ?」と聞く。
そうすると予想してた通りの返事が返ってきた。
色黒:「色々と案内するよ~」と言って、ダッシュボードから観光名所が載っているパンフレットらしきものを取り出した。
色黒:「ほら、ココとココと・・・4箇所周って200NISだ! どうだい?」
むむ・・・これには思わず悩んだ。 4箇所でだいたい2~3時間だという。
そして最後はイスラエルへ戻るチェックポイントで降ろしてくれるという。
けっこう魅力的なんだけど、その4箇所の中にパレスチナの分離壁は入ってなかった。(というか、分離壁は観光地じゃないので当然といえば当然なのだが。)

俺:「おい、壁にも行ってくれ。 分離壁のアートが見たい。 その代わりその2つ目の遺跡には興味が無いから行かなくてもいい。」
俺:「分離壁にも行ってくれるなら200NIS払うぜ。」
色黒:「オーケー、壁も行く!」
こうして交渉は成立してタクシーは走り出した。
が、俺はまだこいつを完全に信用したわけじゃない。

それにしてもこいつはとても陽気で明るい。
ずーっと喋っている。 そして俺はずーっと疑心暗鬼の愛想笑い。
この色黒の名前は「ネビーーレッ」という。 30歳。
なんだよ、俺より年下かよ。 この中近東のテロ顔め。

とか思っていたが、明らかに不安な表情の俺を和ませようとして喋ってくれている。
だって俺って愛想笑いをしながらも、眉間にしわが寄ってるんだもの。
ネビーーッレは本当はいい奴なのかもしれない。
いやいや、でもここで心を許してしまってはダメだ。
しばらく走ると、もう1箇所追加するから300NISでどうだ? と言ってきた。
ぶっ殺すぞ、ネビーーッレ。

多分20分くらいは走ってただろうか、Shepherd's Fieldという場所へ到着した。
その間ずっとネビーーッレは喋りっぱなしだった。
Shepherd's Fieldの門の前でタクシーは止まり、待ってるから見てきなという。
ここが何の場所なのかさっぱり分からないが、帰国したら調べてみればいいか。

Shepherd's Field Shepherd's Field

門をくぐって奥へと歩いていく。
なんだか分からないが綺麗なとこだ。
そして高い丘の上にあるので景色もいい。
といってもほとんどが荒野で、遠くの方に街が見える。

Shepherd's Field Shepherd's Field

ベツレヘムは生誕教会しか調べていない。
あとはパレスチナの分離壁を見れたらいいなーと思ってたくらい。
日本に帰って調べてみても、日本語の記事はたいした事は載ってなかった。

庭園のような道を少し歩くと噴水があり、その先には変わった形の建物があった。
教会にしては変な形だし。
とりあえず中に入ってみる。

Shepherd's Field Shepherd's Field

なんだここは。
キリスト系の場所だという事はわかるが、なんの場所なのかは不明。
人は誰もいない。
そして天井を見ると、

Shepherd's Field Shepherd's Field

おお~綺麗だ!
そしてイエスが十字架に磔にされている置物も綺麗だ。

壁にはたくさんの細かい絵が描かれている。
なんだか分からないけど見事だ。

Shepherd's Field Shepherd's Field

一通り見て周って写真を撮って満足した。
ネビーーッレの待つタクシーへと戻るのだが、ここでとんずらしたらどうなるのだろうか。
ネビーーッレはいつまでも俺を待ってるのだろうか。
それはあまりにも可哀想か。

そんな事を考えながらネビーーッレの待つタクシーへと戻っていった。
その前に、ネビーーッレはちゃんと待っているのか!?

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