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 11.01.22 中東の嫌われ者

パレスチナ自治区 ベツレヘム

さて、次はいよいよ今回の旅の醍醐味ともいえるベツレヘムへ出発。
ベツレヘムはキリスト生誕の地で、誰もが一度は耳にした事がある「パレスチナ自治区」にある。
本来イスラエルとパレスチナは別の国。 しかし宗教や政治絡みのいざこざが絶えず、現在はイスラエルに完全占領されており、パレスチナ人は苦しい生活を強いられている。
その上イスラエルはパレスチナ人居住区を高さ約8mの壁で囲み始め、その総距離は完成すると約800kmにも及ぶ。 その距離は東西ドイツを分断していたベルリンの壁の比ではない。
現在は3分の2ほどが完成し、壁には世界中から平和を願う人達のアーティスティックな絵が描かれていて、実質は観光としても大きな見所である。
もちろんパレスチナには分離壁だけでなく、キリストの生誕教会など他にも多くの名所がある。

イスラエルとパレスチナと聞くと、日本人がまず思い浮かべるはテロとかだと思う。
実際に外務省からパレスチナに関しては「渡航の延期をお勧めします」と警告が出てるし、イスラエル国でさえ「十分注意して下さい」の警告が発されている。
まぁでも実際に毎日自爆テロが起きてるわけじゃないだろうし、流れ弾や手榴弾に当たるより現地の水に当たる方が確率は大きいだろう・・・というのが俺の考え。
せめて旅行保険くらいに入っていった方がよかったかな、と思ったけど。

ベツレヘムへ行く方法はネットで軽く調べていて、バスターミナルも旧市街とホテルの中間にあるのを発見していた。
しかしパスポートをホテルの金庫に置いてあるので、一度ホテルに戻ってパスポートを取り出して少し休憩した。
それと、今回は現金を更に細分化し、まずはズボンのポケットに少々、バッグの外ポケットに少々、バッグの底板の裏に少々と、3箇所に分けて財布はカードもろとも金庫に置いて行く事にした。
支払いは基本的にズボンのポケットからおもむろに金を出す! みたいな感じで。

ホテルを出てアラブバスターミナルへ行き、124番のバスを探す。
たくさんのバスが止まっているが124番のバスは止まっていない。
そしていくら待っても124番のバスは来ない。
もう1種類ベツレヘムまで行く21番のバスも探してみたが影も形も無い。
ここだと思ったはずなのに・・・アラブバスのターミナルは間違っていないはずなのに。

しかし今朝もう1箇所偶然にもアラブバスのターミナルを発見していた。
旧市街のダマスカス門の斜め前、今朝方チラッと見たターミナルもアラブバスのターミナルだった気がする。
念の為行ってみる事にした。

歩く事数分、もう1箇所のアラブバスターミナルに到着し、すぐに21番のバスを発見した。
個人的には124番のバスで行きたかったが、時刻表が無いからいつ来るのか分からないの。
10分ほど待ってみたが、124番のバスは来なかったので21番のバスでベツレヘムまで行く事にした。
料金は7NIS、安い。
客で一杯になったのを見計らってバスは発進した。

エルサレムの市内では多少渋滞にはまりながらも、バスは順調にパレスチナへと走って行った。

ところで、毎度の事だが降りる場所が分からない。
そもそもパレスチナと事なんて行く前は自爆テロが多いとの認識くらいしかなかった。
上で書いたイスラエルとパレスチナの遺恨も全て帰国してから調べて知った事。
車内では観光客もいたが、どちらかというと現地人の方が多い。
現地人の後に付いて降りたって仕方が無いし、パレスチナといえど歩いて周れるほど狭いわけではないので(むしろアップダウンが激しく、市街地は荒野のよう)、とりあえずは生誕教会にいければいいので、適当に降りてタクシーでも捕まえるかな・・・などと考えつつ、ぼんやりと外の風景を眺めながらバスに乗っていた。

30分程走ると荒野の中に検問所のような所があり、軍人が数人銃を構えながら乗ってきた。
軍人といっても兵役中らしき若い兵士だが、数人のパレスチナ人らしき乗客に何か言っている。
俺はここがなんなのかさっぱり分からなかった。
後で知った事によると、ここから先がパレスチナ自治区。
そりゃぁ客も軍人もピリピリしてるわけだ。

そしてさっきから挙動不振な奴が一人。
俺の前の席に座ってる白人のおっさんだ。
こいつはどこからどう見ても旅行者だが、ここで降りるべきかバスに残るべきか迷っているようだ。
おそらくはこのおっさんもイエスの生誕教会に行きたい人物の一人であるんだろうが、もうそこへ着いたのかどうなのか迷っているようだ。
しかし周りは荒野のため、明らかにこの近くには教会などない。
教会どころか民家もないし、下手したらイスラエル兵の鉛玉が飛んで来る。
おっさんは散々キョロキョロした挙句、この検問所で降りていった。
奴はこれからどうするのだろうか・・・。

これで俺も晴れてパレスチナに入国したわけだが、特にパスポートを見せたわけでも金属ゲートをくぐったわけでもない。
なので、実際この時はまだ自分がパレスチナの中にいるとは思っていなかった。

そしてバスは走り出した。
しかし数分走ってバスはまた止まった。 ここもまだ荒野のど真ん中だというのに。
しかしタクシーが数台客待ちをしている。
さっきのおっさんここで降りればよかったのにな。

その後も停車しては数人おろして再度発進を繰り返し、バスの中の乗客も徐々に少なくなってきた。
う~ん、俺はどこで降りるべきか。
そう思いながら次に停車した所では10人弱の乗客が降り、周りもけっこう賑やかな地域だったので俺も一緒に降りる事にした。

さてここから生誕教会へはどう行けばいいのか。
もちろんパレスチナの地図など持ってないし、一番堅実なのはタクシーか。

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