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 11.01.22 中東の嫌われ者

旧市街 ダビデの塔と岩のドーム

パレスチナからイスラエルの旧市街へ向かうアラブバスの中はそこそこ混雑していた。
歩き疲れていたのでバスの中では眠ってしまっていたが、ふと気付いたら既に窓の外は旧市街の近辺で、そこには見覚えのある雑多な街並みがあった。
バスはちょうどいつものファラフェル屋の近くで停車したので降りる事にした。

まだ時刻は夕方。 さてこれからどうするか。
少し考えたが、今朝入れなかったダビデの塔に再度行ってみる事にした。
ひょっとしたらもう工事は終わってるかもしれないし、開館されているかもしれないし。

ダビデの塔は旧市街の中の高台にあるので、ヒーヒー言いながら狭い路地の階段を上りながら目指す。
左右の商店からは相変わらずの声掛けが聞こえてくる。
長くクネクネした階段を上りきるとダビデの塔に到着した。

ダビデの塔の博物館 ダビデの塔の博物館

・・・やはり入れない。
今朝工事をしていた作業員は既に居なくなってるが、ダビデの塔の博物館の扉は固く閉ざされている。
これはもう運が悪かったと思って諦めるしかない。
ダビデの塔からは、エルサレム市内と旧市街が一望できるとどこかのサイトで見て楽しみにしてただけに、非常に残念。
その代わりオリーブ山から旧市街を見下ろすという方法もあるが、さすがに精神的にも肉体的にも疲れ切っていたのでやめとく事にした。

こうなったら旧市街の中のなるべく高い位置からムスリムの岩のドームでも見てやろう。
となると、なるべく高いビューポイントを探さなければならない。
この旧市街は場所によってかなりの高低差がある。
特にダビデの塔があるヤッフォ門からシオン門に向かってはかなり高い位置にあるので、ここら辺にきっといいポイントがあると思うんだ。
勝手に納得して歩き回り始めた。

お洒落な建物とWASABI お洒落な建物とWASABI

適当に歩いていたらお洒落な建物やお店が多くなった。
ここら辺はアルメニア人地区だからだろうか。
そして「WASABI」という日本食屋・・・。
これは微妙にそそられたが、よーく考えてみると、春巻き、手羽先、太巻き、かっぱ巻き、焼きそば・・・。
春巻きがある時点で日本食屋ではない事はすぐに分かった。
看板のWASABIの文字の下にも ASIAN FOOD BARと書いてあるし。
冷静に考えた結果、入るのはやめた。

辺りはどんどん暗くなってきた。
しかしなかなかいいポイントが見つからない。
ここだ! と思った場所の先には民家になっていたりレストランになっていたり。
複雑に入り組んだ迷路のような通路は、上へ下へと入り組んでいる。
あまり下に下がってしまうと、岩のドームのタマネギ頭が見えないから下がりすぎてしまうのはダメだ。
悩みながら歩いていると微笑ましい光景を見た。

旧市街のネコたち 旧市街のネコたち

そういえばここら辺はとてもネコが多い。
右から左から、上から下から、ネコがわらわら湧いてくる。
ふとネコの集団に目をやると、一人のムスリムの女性がネコと戯れていた。
ネコ好きには宗教の壁など関係ないんだな。 と、少しだけ温かな気持ちになった。

そうしてやっと見つけた場所。
最も高いところからはかなり下がってきてしまったが、ここが限界の撮影ポイント。
早速カメラを構えて写真を撮ろうとすると、馴れ馴れしげな兄弟が一組・・・1NISちょうだいと言って近づいてきた。
こいつら本当にどういう教育受けてるんだ。
旅行者をみつけたら、まず金をせびれとでも親や学校から言われてるのか!?
まぁどうでもいいか。 1NISってところが可愛いもんだ。

おいガキ共! この俺がお前らに1NISをあげるのは構わない。
その代わり写真撮らせろよ!? そのくらいはいいな? じゃないと1NISやらないぞ!
その結果が↓だ。

1NISの兄弟 1NISの兄弟

俺:「ほらよ! 1NISだ。」
兄弟:「もっとちょうだい・・・もっと!」
俺:「うるさいお前ら! もうあっち行け!!」

さて話を戻すと、今朝中に入れなかったムスリムの岩のドームであるが、このポイントからの撮影は嘆きの壁は全体を見渡す事ができるものの、岩のドームに関してはタマネギの部分しか見る事ができなかった。
やはり下がりすぎた結果であるが、これ以上の場所はおそらく探しても無駄だと思い写真を撮った。

岩のドームと嘆きの壁 岩のドームと嘆きの壁

まぁこれだけ撮れれば充分か。
ちなみに、2枚目の嘆きの壁全体が写っている写真の左上の方が岩のドームであり、右の方に見えるタマネギは岩のドームではない。

さて、そろそろ俺の体力も限界に近づいてきた。
どこかで夜飯食って、ついでに酒も買ってホテルへ戻らなければ。
明日は4時起きの予定なので、寝坊すると帰国できなくなってしまう。
まずエルサレムからテルアビブまで何とかして帰らなければならないんだから。

そう思いながらどんどん下へ下っていく。
この数日で旧市街の中の迷路もだいぶ覚えた。
嘆きの壁の横側からダマスカス門へ伸びる道がある。
昨日も今日も何度もこの道を通ったが、なぜ今回に限って足を止めてしまったのか。

足が止まった場所はアクセサリー屋の店先の前。
まさに鴨がネギを背負って来たとはこの事であり、すぐに中から店員が出てきてしまった。
一度でも捕まってしまったら最後。 簡単には逃げる事はできない。
何が欲しいんだ? どれが欲しいんだ? これなんかどうだ?
いやーもうウザイ ウザイ。

店先の商品に足を止めてしまった理由は、数日前の死海でどうやらピアスを1個なくしてしまったようで、何かいいのがあればと思い何気なく足を止めてしまったのだ。
もちろん買うつもりが全く無いわけではないが、値段交渉をしなければならないのが非常に面倒くさいので、すぐに立ち去るつもりだった。
が、ここは日本ではなくイスラエル。 しかも一番ボッタクリ率の高い旧市街の中だ。

商品を色々と見せられるが、これといった欲しい感じのが無い。
お、このデザインとサイズはいい感じ。 と思ってもピアスではなくチョーカーだったり。
そこで俺は言った。
「おい、このチョーカーのクロスが欲しいんだが、チェーンを外してフックにしてくれないか? 俺はピアスが欲しいんだ。」
日本だったら言えない無茶な注文も、ここなら容易に発言できる。
が、さすがに少し困った顔をしていたが、できないはずはないので強引に押してみた。

いくらだ? 200NISだって? ボッタクリにもほどがあるぜ。 あばよ!
すると必死に止める店員。 値段は俺が提示してくれと言う。
ん~じゃぁ50NISだ。
まぁなんだかんだお互いに交渉しあって60NISで合意。
何で20NISくらいの提示をしなかったのか、今となって少し後悔。

アクセ屋の三兄弟 アクセ屋の三兄弟

ちなみに写真左が次男16歳、真ん中が長男21歳、右が三男で年齢不明。
三男の名前はジーコ、長男と次男の名前はどっちがどっちだったか忘れたが、シッコとニッコという名前だった。
さらに店には居ないが四男までいるらしい。

チョーカーをピアスに改造してもらい店を出る時、長男が「お願い! あと10NISだけ頂戴!」と言ってきた。
それは聞き覚えのあるような懇願だった。
まさにアレだ。
『お願い! 先っちょだけだから!! 絶対中には入れないから!!』
これとまさに同じだった。
しかし俺が断るより早く次男が「いい加減にしろ兄貴!」と言っていた。

店を出てからダマスカス門へ向かって歩いてる途中、突然全ての灯りが消えて真っ暗になった。
周りを見ると、街灯も店頭の明かりも家の明かりも全ての灯りが消えている。
これも宗教的な何かの一種か? と思ったが、単に停電しているだけであった。

ダマスカス門へ到着し外に出ると、旧市街の外側も停電が起きていた。
てっきり旧市街の中だけかと思ったのだが。
そして当然のように信号も消えているし、店のネオン管も全て消えていた。
点いているのは、なぜか1本だけ点灯している街灯と車のライトのみ。

エルサレム大停電 エルサレム大停電

帰りにファラフェルと酒を買ってホテルへ戻ろうと思っていたのだが、これは停電が復旧するのを待つしかなかった。
停電中でも営業はしてるかもしれないが、レジから金を出せなかったり、暗闇の中で釣銭をごまかされる可能性があるので、買い物をする気になれなかった。
しかしエルサレムって一応首都でしょ。 これじゃぁ途上国と変わらない。

10分、20分、30分・・・復旧する様子が全く無い。
ダマスカス門の前の階段に座って電気の復旧を待っているわけだが、だんだんと冷え込んできた。
寒さも限界に近づいてきたので、19時まで待って復旧しなかったら一度ホテルに戻ろうと決めた。
そして19時。 停電から1時間近く経つが、とうとう電気は復旧しなかった。
なんなんだよこの国は。

エルサレム大停電 エルサレム大停電

街灯りが全て消灯してるせいか、寒さが普段より増している感じがする。
真っ暗な闇をトボトボとホテルまで歩いていたその時、街中の灯りが突然一斉に点灯した。
あちこちから拍手や歓声が聞こえてくる。

そこで俺は引き返し、いつものファラフェル屋へと向かった。
今日はNo.2とNo.4を1つずつ購入。

いつものファラフェル屋 いつものファラフェル屋

ファラフェル購入の帰りに商店へも立ち寄り酒を購入。
その後はファラフェルを食べ歩きしながらホテルへと帰った。

ホテルに到着し酒を飲みながら日記を書いていたらいつの間にか爆睡していた。
今朝は早くに起床し、一日中歩き回ってたから仕方がない。
突如目を覚まし、残りの酒を飲みながら風呂に入って湯船に浸かる事にした。

時刻は1時過ぎ。 起床予定時間まで3時間もない・・・。

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