再びタクシーに乗り走り出す。
くねくねした山道をどんどん登っていくと、道の端でタクシーが止まり、おばさんが「あなたはこっち。ここからその道を歩きなさい。」と言う。(そんな気がする。)
俺はネットで予習したためすぐ分かった。 ここからはおそらく燕子口で、車は通れない為俺1人で歩くのだ。
距離は約2km。 タクシーはその先回りして合流地点で待ってるというワケだ。
平日だというのに結構観光客が多い。
でも1人で来てるのは俺だけだ。
白人のおばちゃんが英語で「写真を撮ってやる!」というのでお願いした。
写った俺の写真はキモイ事になっていた。
そして明らかに日本の老人旅行の連中も居る。
旗持ちの人の後にぞろぞろとジジババが歩いている。
燕子口とは、岩肌が地下水で浸食され穴が開いたもので、ツバメがそこに巣を作る事から呼ばれるようになった。
断崖絶壁の岩肌に、大小様々な空洞が出来ているのは見ると面白い。
自然の力強さを感じる。
実際にツバメがスーーーッ・・・と顔の前を通っていく。
飛んでるツバメを写真に写すのは難しいので諦めた。
写真を撮りまくりながら必死になって歩いていると、2kmの道のりはあっという間だった。
のんびり歩いていても30分も経ってなかったんじゃないか。
合流地点に着くと再びタクシーに乗り、さらに山道を昇りだす。
観光バスもたくさん走ってるけど、よくこんなとこ走れるなと思う。
雨はどんどん強くなっていく。
しばらく走ると、また遊歩道を歩く事になった。
なんつーか、銅像とか立ってるんだが誰なのかも分からないし、地図にも載ってない場所だ。
でも他の観光客も歩いてるの、それなりに有名なのだろうか?
ちょうど↑の写真の階段を上っている時だった。
老人ツアーの中の1人の婆さんが俺に話しかけてきた。
「トイレはこの上にあるかしらねえ」
俺はこの婆さんとは何の面識も無いし、もちろん同じ観光ツアーの仲間でもない。
日本人も台湾人も外見は同じで見分けはつかないはずだが・・・こういう年寄りには人種なんて一切関係ないんだ。
ボケてて自分が海外に居る事を忘れてるんじゃないか?
「さぁどうでしょうね。」
冷たいかもしれないけど、こう返すしかなかった。
階段を上り切るとやはりトイレがあった。
円を描くように仮設トイレが7、8台建っていた。
俺は別にトイレに用はないのでそのままぐるっと周り階段を降りた。
途中、ふと気付くと・・・
草葉の陰でおばさんが立ちション(正確には座りション)しているではないか・・・。(先程の婆さんとは別人)
見たくもないのに偶然目に入った挙句、そのおばさんと目まで合ってしまった。
「あ~あ・・・」
小便おばさんは驚きともため息ともつかぬ声を発した。
あと10段も階段を上がれば便所だってのに!!
あのおばさんが日本人でない事だけをひたすら祈った。 |