ダッシュでバスに乗り込んだのはいいけど、心の準備が全く出来ていなかった。
金は!? いくらだ? 先払い? 後払い?
日本でも地域によって値段や前乗り後ろ乗りなど全然違うのに、台湾のバスなど分かるはずも無い。
「金は今払うのか? いくらだ?」と言ったが、「あ? あ?」と返されるだけ。
当然だ。 だって俺テンパって日本語で言ってるんだから。
それにしてもチンピラみたいな運転手だ。 携帯をいじってる。 大丈夫かよ。
「ジウフェン(九份)」と言うと、「きゅうじゅう!」と日本語で返ってきた。
思わず三村並みの突込みが出そうになった。
90元を料金箱に入れ、空いている右側の席へ座る。
降りるバス停を見る為に席は右側に座った方がよい。 と、どこかのサイトに書いてあったから。
それにしても、電車に乗ったりバスに乗ったり、飯を食ったり・・・些細な事でも1つ1つ成功すると本当に嬉しい。
言葉が通じなくて不自由な思いもするし、道に迷った時なんか日本に居る時とは比べ物にならない程に不安になるけど、あぁ・・・俺1人の力で全部やってるんだな。 と心で実感し、一喜一憂する。 そして自然と笑みが出てくる。
きっとキモイ男に思われてるに違いない。
忠孝復興站からは約1時間。 その間は音楽を聴きながら車窓を眺めていた。
街中でも狭い所でもバスはすごい飛ばす。 車線もウインカーも何も関係ない。
空港から出ていたリムジンバスはこんなにひどくなかった。 さすがチンピラ・・・。
郊外に向かうにつれ、雨はどんどん激しくなってきた。
途中いきなりバスターミナルみたいな所に入り、チンピラ運転手が降りる。
何だここは。 台湾の路線バスは休憩すんのか?
そう思ってると、チンピラはバスのエンジンをかけたままガソリンを入れ始めた。
こえええ!!
途中居眠りしていて、気が付くとかなりの人数が乗り込んできた。
見覚えあるバス停とスーパー。 ネットで見たままの瑞芳火車站の近辺だ。 という事は九份までもう少し。
15分程バスはさらに走り、チンピラが大きな声で何か言っていた。
3分の2くらいの人がぞろぞろ降りていく。 俺も降りるべきか? ここはどこだ? 九份か?
雨でバス停が見えないが、外には結構な人が居るようだし、賑やかな所だ。
でもまだ車内には残ってる人も居るので、もう少し様子を見る事にした。
さらにそこから15分ほど走る。 くねくねした山道をさらに登っていく。
しばらくするとチンピラが「○×△□☆♂♀!!」 また大声で何か言っている。
ここで殆どの乗客が降りた。 明らかにここが九份ではないのは俺でも分かった。
やはり乗り過ごしていた。 きっとさっきのバス停だったに違いない。
しかしこれ以上遠くに行ってもしょうがないので、俺も慌ててバスから降りた。
九份までしか払ってないわけだから、追加の金は? とか思ったが深く考えない事にした。
金が必要ならチンピラが走って追ってくるだろう。 ひょっとしたら大雨だから面倒臭がって追わないかもしれないし。
着いた所は金瓜山でここも1つの観光名所だ。 映画の舞台にもなっている。
しかし九份以上にここには来るとは思ってなかったので、ほとんど下調べはしていない。
確か昔の鉱山跡や博物館があるだけで、俺は全く興味が沸かないが、来てしまったからには一応行ってみる。
しかし雨が半端じゃない。 上から前から横から降ってくる。
そして寒い。 標高が高いからだろう。 雲もすぐ目の前にあるし、霧も出ている。
この階段はどこまで続くんだ。 かなり息が切れてきた。
でも晴れていたらかなり景色がいいだろうな・・・そう思いながら歩いていると、左に向かう脇道に素晴らしい物(痕跡)を発見!!
ゴールラッシュ時代に使われていたトロッコの跡ではないか!!
興奮しながら写真に収め、廃線跡を辿って行く。 一気にテンションが上がった。
着いた先のトロッコ跡は金山の洞窟へと伸びていたが、そこから先は博物館に続いていた為、興味が無いので別へ向かった。
それにしても雨がすごくてせっかくの景色も綺麗に撮れない。
だめだ。 この雨に限界だ。 時間も16時を回っていた。
雨がすごすぎて、カメラのレンズにどんどん飛沫が飛ぶ。
滝の写真や階段や風景などを数枚撮って戻る事にした。
そして今度こそ九份まで向かう! |