冷たい。 海水に浸かった冷たさと靴の中の砂が足に不快感をもたらす。
Port Campbellまではもう数kmも無いはずだ。 10分も走れば街に到着するだろうが、辺りは完全に夜の闇に飲み込まれた。
街灯も何も無い。 不思議な事に走ってる車もほとんど無い。
さっきまでThe Twelve Apostlesに居た人達はどこへ向かったのだろうか。
俺がLoch Ard Gorgeを見物してる間に出発したのだろうか。
だとしたらどっちへ?
Apollo Bayに行くには1時間はかかるし、それともみんなPort Campbellへ向かったのだろうか。
だとしたら・・・俺ももっと急がねば。
Port Campbellは本当に小さな街だから、彼らが宿に泊まってしまうと満室になって俺が泊まれないかもしれない!!
このオフシーズンでは決してそんな事は無いのだが、焦り始めたら人間の脳はマイナス思考に働いてしまう。
Loch Ard Gorgeから15分も走らすとPort Campbellの街灯りが見えてきた。
やっと着いた! 縦横数百mの本当に小さな街。
さて・・・ここから一応目星を付けておいた宿を探さねば。 ※参考Googlemap航空写真
宿は予約などして無いし、大まかなGooglemapを頼りに街の中に突入した。
勘を頼りに走ったが見つからない。 こっちかな?と思いバイクを走らせても・・・街がすぐに終わってしまう!
同じ通りを2度3度、いや5度6度もしている。 隣の通りもその隣の通りも何往復もする。
そして外周の通りも何週もする。
区画は綺麗に整理されてて、その1本1本の通りに名前が付いて看板まで立ってるのでとても分かりやすいのだが、肝心の宿は見つからず。
宿の名前は「Port Campbell MOTOR INN」。 しかし見つからない。
幸いにも他にもMotelやホステルはたくさん見かけたので、後10分探して見つからなければどっかテキトーな宿に飛び込もうと思ってたら、町外れにPort Campbell MOTOR INNの看板を発見。
今回の写真は全て翌朝のものです。 当日は完全に日が暮れて真っ暗だった為翌朝に撮りました。
見つかったΣ(・∀・)b
俺すごい! 最高だよ俺!! 自分を褒め称えながら敷地内へ突入。
そして突如不安が。
時間も少し遅いし、部屋が満室だったら・・・それならば他の宿に移ればいいのだが、金は!? 金はいくらかかるのだろうか。
昨日のホテルと同じくらいなら払えるけど・・・ボられたらどうしよう。
ふふん、まぁいいか。
勝手にバイクを止め、レセプションにて従業員を呼ぶ。
駐車場を見ると車は1台しか止まってない。 これなら余裕で部屋の空きはあるな。
レセプションのドアは空いてるが従業員が出てこない。 その代わりレトリバーと猫がすり寄って来て可愛かった。
大声でハロ~! ハーイ! ハロ~! ハ~イ! と繰り返す。 まるでイクラちゃんみたいだ。
少しするとニコニコした人のよさそうな爺さんが出てきた。
「ペラペラペ~ラ (俺は今夜ここに泊まりたいんだ!!!)」
「ペラペラペ~ラ (ほっほっほ、あるぞ。部屋はあるぞ!)」
爺さんは色々話しかけてきた。
「ペラペラペ~ラ? (どこから来おったのかな)」
「ペラペラペ~ラ! (埼玉の草加という煎餅の有名な所から来たよ! 一駅三線で便利だよ!)」
「ペラペラペ~ラ?」
「^_^」
「ペラペラペ~ラ?」
「ヾ= ̄∇ ̄)ノ」
「ペラペラペ~ラ?」
「(・w・)」
「ペラペラペ~ラ?」
「(´・ω・`)」
「ペラペラペ~ラ?」
「(。´-д-)」
「(@・0・)ノ@・0・)ノ@・0・)ノ いってら~♪」
「ァアァアァ(≧∀≦)アァアァアァアァ」
「ゥヮ──。゚(。pдq。)゚。──ン!!」
値段を見ると95AU$と書かれていた。 普通の値段で安心した。
100AU$渡すとなぜだか釣りが10AU$帰ってきた。
なぜだろう、爺さんは親日家なのだろうか、それとも朝食無しにしたからだろうか、それとも痴呆が始まってきてるのだろうか。
俺は常にニコニコしていた貴方を忘れない!!
「ペラペラペ~ラ (君の部屋は1号室だよ。)」
「ペラペラペ~ラ (ありがとう!)」
1号室・・・禁煙と書いてあったな。 4号室は喫煙可だったみたいだが、まぁいいか。
いかにもモーテルといった建物の雰囲気だが、全然悪くない。
むしろかなりいい感じで、海外のこういう所には滅多に泊まれないだろうから思い出に残ると思う。
とりあえずまずは靴と靴下とズボンの洗濯をしなければ。
今から洗っても明日の朝に乾くだろうか。 今は真冬だし、外に干しても乾かないかもしれない・・・。
そんな事を思いながら部屋のドアを開け、入り口の電気を点けてびっくりした。
まず目に飛び込んできたのがシングルとクイーンのベッド。 俺1人なのに(笑
そしてALLレンガ造りの壁に白熱灯の間接照明。
靴を脱いで入りたくなるような絨毯に。 テーブルも棚も綺麗に掃除が行き届いている。
こ・・・これは素晴らしい!!
まずはバスルームへ直行して、ズボンと靴下と靴を脱いで足を洗った。
この部屋では靴を履いて歩きたくない。
もちろん湯もちゃんと出る。
石鹸を使って洗面台でズボンと靴下を洗う。 面倒くさかったのは靴で、洗っても洗っても中から砂が出てきた。
多分洗濯だけで1時間はかけたと思う。
さて一服して休憩しよう。
本来は宿のネタだけで1回分にする事はないのだが、この素晴らしさはぜひとも写真たっぷりで紹介したかった。
紅茶とコーヒーがたっぷり置いてある。 クッキーもあった。
昨日泊まったメルボルン駅前のホテルとほぼ同じ値段なのに、この格差はどういう事だろう。
サービスも、愛想も、部屋の質も何もかもがこっちの方が格が高い。
さらにどちらも素泊まりなのに、昨日は現金で支払ってるにもかかわらずデポジットでカードやパスポートを提示したが、こちらは現金と笑顔だけでOKだった。
やはり田舎はいいな。
空調も調節でき、↑の写真のTVの下にある白いBOXから温風が出ている事を発見した俺は、隣の椅子を倒して靴と靴下とズボンを乾かし始めた。
風を最強にすれば明日の朝には乾くだろう。
パンツ一丁で紅茶をたしなんでいると、とても重大な事に気付いた。 今更遅いんだが。
め、め・・・飯が食いに行けねーーーー!!
しまったー。 全然考えてなかった!
靴は我慢して履いて帰ってからまた乾かしたとしても、ズボンはどうにもなりません。
「あのJapaneseなんでズボン濡れてるの? ヒソヒソ」
「さぁ、漏らしたんじゃね? ヒソヒソ」
なんて事になりかねない。
旅先の食事というのも1つの楽しみなのだが、今夜は本当に泣きながら諦めて、部屋にあった紅茶とクッキーで飢えを凌いだ。
シャワーを浴びてバスルームから戻ってみると部屋はいい具合に温まってきた。
何と素晴らしい! 早めに寝て明日に備えようと思ったが、この日の日記をノートにつけるだけで2時間もかかってしまった。
明日は6時に起きて、日の出前には出発したい。
このまま靴とズボンを放置しても翌朝までに乾く事は確実!
風邪を引くといけないので、暖房を弱めて布団へ入った。
そしたらなんと・・・なんと布団の中でもびっくり!!
電気敷毛布があるではないですか!!!
なになにこの気が利いたサービス!!
よくラブホとかにあるようなお客様ノートがこの宿にもあったら、きっと褒めちぎった長文を書いてたに違いない!
ホテルランクをつけるとしたら本当に☆5つだよ!!
電気敷毛布も温まって足先も温かい。 これで疲れはかなり取れるだろう。 桃色吐息だ!
ところがところが、ところがだ!!
電気を消して目を瞑った瞬間、新たな苦しみが発生した。
バイクのモーター音が今になって頭から離れない・・・。
雨の高速を走っている俺の姿が浮かんでくる。
そして最後には必ずスリップして転倒する。
モーター音が鳴り響き、雨の中でバイクが転倒、浮かんでは消え・・・浮かんでは消え・・・これが延々とループする。
そんな状態だったので、6時起床予定が6時半になってしまい、またしても寝坊してしまった。
でも靴も靴下もズボンもしっかり乾いてる!
早く出発して残りのPort Campbell National Parkを巡って、17時にはMelbourneでバイクを返さなければならない。
7時半にチェックアウトをしにレセプションまで行く。
が、営業は朝8時からだと・・・。
仕方が無いのでうんこをしたり、周りの写真を撮ったりして時間を潰す。
今回の日記の屋外の写真は全てその時に撮った物です。
小さいながらもプールもあったり、夏にはBBQもできるらしい。
ただ宿の予約を取るのが大変だと思う。
夏になればこの街自体の宿は、早いうちから全て満室になると思う。 国立公園の中にある唯一の街だから。
多分ここから近いApollo Bayや、ひょっとするとGeelongやMelbourneも満室になるかも。
今朝は雲は多いが雨は降ってない。
7時半の時点では日の出はまだだったが、8時になったら日が昇ってしまった。
レセプションへ行きチェックアウトを済ます。 今日も長い1日が始まった。
見たこともない鳥が聞いた事もない声で鳴いている。 静寂のPort Campbellに響いていた。
Port Campbellからさらに西へ。 朝靄の中を今日もバイクで走り始めた。 |